Canon IXY600F

これは2011年9月23日に発売されたばかりの新製品である。まだたったの3週間。

IXYシリーズの210と410の上位機種と言う位置づけで開発されたカメラである。

 

結論から言って、大変に気合が入った素晴らしいカメラである。

 

コンパクトデジカメのユーザーは、基本的にバカチョンで使用するのだが、写真はどういう条件の時に失敗するのかということをご存知ない。

従ってカメラの方で可能な限り人の失敗(無知)をカバーしてあげて、できるだけ失敗写真にならないようにアシストすることが必要なのである。

 

このカメラよりも前の全てのコンパクトデジカメは、開発者の心のどこかに撮影原理に基づいたインターフェースを残したくて、理想的なバカチョンを作る妨げになっていたように思う。

例えば夜景を撮りたい時は、絞りを開けてシャッタースピードを遅くし感度を上げるということをするわけだが、ユーザーはそんなことは知ったことではないのに「明るいレンズを採用しているので暗いところでも手振れしません」てなことをカタログや説明書に書いてしまう。

こんな文章を書かれても、ユーザーにとっては?????なのにね。

 

まずはそういった意味でこのIXY600Fは真のバカチョンになった最初のカメラであると思う。

商品としては強力な手振れ補正、シーン認識の高速化と多様化、コンティニアスAFの高速化、8倍ズームレンズの薄型化によるコンパクトボディ、キャノン初のデジタルフィルター群(今頃出すなよ)、キャノンお得意のモノブロック的な造形あたりがPRポイントである。

価格も新発売で25000円あたりからスタートなので、商品価値とマッチしていると思う。

 

こんな具合にとても素晴らしい商品だと思う。

販売していてもとても売りやすく、価格的には上級の下なのにも関わらず要点をきちんと説明することで結構買ってもらえる。

今日はキャノンから派遣で来ていたヘルパーの女の子(25歳くらい)がいたのだが、最後の30分で上記のポイントを教えてあげたところ、その直後に接客したお客さんに見事に600Fを販売していた。

 

ただし勘違いしてはいけないのが、このカメラを使うと失敗写真は減るのだが、他のカメラより綺麗に写るわけではない。

使っている撮像素子は対角寸法1/2.3インチの裏面照射型MOSであって、これは中級カメラ以上では共通の素子であり、そういう意味で画質的には概ね同一になる訳である。

無論メーカーやモデルによって画像処理エンジンのアルゴリズムが違うので同じ絵にはならないのだが、性能としては似たり寄ったりとなる。

例えるならクルマのエンジン排気量が同じ1500㏄であれば、メーカーが違っても概ね似たような性能になるのと同じことである。

 

デジカメは小さなパソコンと画像処理ソフトが詰まったメカトロニクス(死後だな)であり、常に新しい製品はどこか進歩して登場してくる。

多分電気店で販売している商品の中で一番進化のスピードが速いと思う。

このIXY600Fも何か月かすると、後から発売されたカメラに埋もれてしまうのだろう。

果たして何か月持ちこたえるか、ちょっと気にして見てみたくなる、そんな完成度の高いカメラである。