ダイハツムーブ2007年製NAエンジン

車検の代車で借りた。実はトヨタ車が好きではなく、トヨタ傘下のダイハツにも何となく好印象はなかった。しかし余りにも意外なことにこのクルマはとても良くできているのであった。先日現行プリウスの後部座席に乗ったが、軽量化による悪影響が五感のうち嗅覚を除く四感で感じられた。しかしムーブでそのようなことを感じることはなかった。

 

まず乗り心地がとても優れている。時速10km程度まではなぜか路面のザラザラをそのままシートに伝えてくるのだが、そこから90kmまで、とても軽サイズの揺れとは信じられないフラット感であった。

ステアリングは少しスローでアンダーではあるけれども、日常走行内では十分にコントローラブルである。4ATのセッティングも大変に良く、ATに限っていえば過去最高である。

 

しかし全ての工業製品において、完璧ということは無いのである。一番「もったいない」と感じたのは空調のファンから出る音だった。噴出し音が「ひゅー」とホワイトノイズ系の音ならばしかたない。しかしそれと重ねて「ブボボボボボー」という大きな音が重なっているのだ。ファンスイッチが1だったら走行中は問題ないレベルだが、2~4だとどんどん大きくなってしまい、使いたくなくなる。ダイハツの人は誰も気にしなかったのだろうか??

次にシートである。この個体の走行距離は6万km代であるが、全ての機構に衰えは感じられない。しかし惜しいことにシートからきしみ音が出るのである。軽はタウンカーなのですわり心地は余ほど酷くなければ良いと思っているが、ハンドルを切るたびにシートから音が鳴ることがこんなにイライラするとは思いもよらなかった。シートはボディといっしょで、クルマが寿命を迎えるまで使われるのだから、手を抜かないでもらいたいところである。

 

ボンネットを開けてみると、小さいエンジンやその他の部品がこじんまりと収まっている。良く出来ていると思う。しかしクラッシャブルゾーンが小さいところには、恐怖心に近いものを感じる。単独でのクラッシュテストには合格しているのだろう。しかしあれは相手のクルマの重量が自分と同じという前提でのテストなので、もっと重たい普通自動車を相手にするとインパクトエネルギーはずっと大きくなってしまう。相撲取りとちびっ子力士みたいなことである。

ダイハツのライバル企業はスズキである。かつてワゴンRとアルト、それからスイフトと3台のスズキ社に乗ったが、今回ムーブに乗ってみた範囲ではダイハツが優位と言える。

 

軽同士を比べる視線で見ていると軽も悪くないかなとも思うが、パワー不足だけはどうしようもなく、衝突安全性面でのリスクも取りたくないと改めて思った。