スズキアルト

代車でアルトに乗った。

まだ1450kmしか走っていない新車である。

 

30年前に乗ったアルトの印象は、とにかく騒々しくて前に進まないクルマというものだったが、現代のアルトはスイスイとごく普通のクルマとして走ってくれる。

街乗り用の軽自動車としては、必要十分な装備である。

あるべき処にスイッチがあり、初めて乗っても困ることが無い程度の装備とも言える。

 

残念なのはシートのかけ心地で、どうしてもしっくりこなかった。軽自動車と思わせない大振りさを無理に求めたように感じた。

またヘッドレストが遠く通常運転時にレストすることは不可能である。

 

リアシートに座ってみると、頭の上にはまだ十分に空間があり上手なパッケージングに感心した。

残念なのはヘッドレストが無いこと。法律上は無くても良いのかも知れないが、追突されたらたまったものではないのだから、安全をコストダウンしてはいけない。

 

エンジンルームには、小ぶりで合理的思想に基づいて配置されたパーツ群が収まっていた。

660ccの3気筒、4段ATという平凡なスペックであるが、徹底的にフリクションを排除したように感じられる小気味良い駆動系には感心させられた。もちろん軽のNAだから絶対的なパワーは高が知れているのだが、軽という位置づけに割り切って開発された優れたパワートレーンである。

一方シャーシ性能は余り褒められたものではない。

乗り心地はまぁまぁである。フリクションは感じられない。但しフラットな路面の場合に限る。

少し大きな段差があると、ボヨンボヨンと跳ねてしまう。ストロークが足りないのだ。

ステアリングはアンダーに徹していて、攻めて走る気にはならない。更に単なるアンダーではなく、どの速度域でも舵がハンドルに頼っている感じがあって、自律的な安定が保てない。

ということで、本当に近距離のお買いものクルマとしてしか使いたくない。

 

95万円ということを考えれば、これでも上出来と言えようか。

VWとスズキのM&Aはお流れになったようだが、確かにスズキのパワートレーンが持つスムーズさとVWグループが持つシャーシノウハウを合体して、VW車より安いラインが生まれてくれたら面白かったのにと、このクルマを運転しながら思った。

 

最後にこの写真であるが、リアハッチの板金の薄さが、やはり軽であり事故ったら最期という雰囲気を漂わせている。