温室リフォーム

これを書いている今日の日付は2011年3月24日。まだ温室は修理中で栽培は始めていないけど、何だかようやくトンネルの出口が見えたように思うので、温室の全容について書いておこうと思う。

 

初めて温室と対面した時の印象は、「ボロボロ。」であった。あちこちの壁から重機やトラクタを出し入れできるように、大家さんが柱を切ってしまっていたし、側面のビニールは殆ど全部剥がれているし、天窓もぶっ飛んでるし、柱には雑草のつるが巻き付いているしで、荒れ放題。中だけでなく周囲もほったらかしなので水はけが悪く雨が降ると入り口がぬかるんで、長靴でないと入れない状態。

 

段々わかってくるのだけど、地面の水溜りが大変な曲者。

屋根が破れているのは面積で1割程度なのに、5mmも雨が降ると温室の中は水浸しになってしまうのだ。どう考えても温室の屋根に降った雨よりも多くの水が地中から湧き出してくるとしか思えなかった。

 

温室を借りた当初、ここを紹介してくださった並びの温室で栽培している方から、仕事の進め方についてアドバイスを頂いた。屋根を暫定的に直して、中の栽培設備を作って栽培を始め、それから屋根を順次正式に直していけばいいと。最初はその言葉に従って屋根の作業をしたのだが、それでも雨が降るとやはり水がわいてきた。とても中の栽培設備どころではなく、右往左往し、そのうち仮に修理したところは徐々に壊れ始めて、元の木阿弥。

 

大家さんはこの問題をどうクリアしていたのか聞きに行ってみた。すると結構なパワーがあるポンプで暗渠排水していたという(レベルスイッチ付き10万円クラス)。確かに温室の隅には集水槽がある。でも暗渠がどんなルートで埋まっているかは、記憶が曖昧ではっきりしない。

とりあえず大家さんと同じことをやってみるべく、強力ポンプを購入することにした。念のためこの温室の面積に100mm/hrの雨が降ってもいいだけのパワーを持ったポンプを購入した。それは大家さんが使っていたというのより格上だったが、ためらいはなかった。ポンプを設置し雨が降るのを待った。そして待望の雨が降りポンプは大活躍をしたのだけど、しかし、、、、無常にも水溜りは現れたのだった。これは何を意味するのかというと、埋設した暗渠のパイプが途中で詰まったということが考えられる。埋まっているパイプの詰まりは、もうどうしようもない。

 

話しは戻るが、そもそもこの温室を作った当初、大家さんは何を栽培していたのか。どうやら初めは土耕でカボチャやキュウリをやっていたらしい(人のいいおじいさんなのにあまりハッキリは教えてくれないところをみると、何か言いたくないことがあるようなんだけど)。しかし段々根の張りが悪くなって、市が持っているトレンチャーを借りて暗渠を入れたということだった。でもその後どの段階かわからないけど、トマトの養液栽培に切り替えたのだよね。

 

どうも昔々のお話は怪しいことばかりであるとわかってきたので、自分で対処しようと考えを切り替えることにした。まずこの水がどこから来るのかである。何ヶ月にも渡って小雨大雨五月雨梅雨夕立と観察をしていてわかったことは、気象庁的降雨量とはほとんど関係なくいつも水溜りができるということであった。とても不思議なことだけど、確かにそうなのである。どうしてそんなことになるのか、、、、??

 

この温室は田んぼを埋め立てた土地に建っていて、北側には15mくらいの丘があり、南側は田んぼが広がっている。ボクの想像では雨が降ると北側の丘に降った水が地中のある層(粘土質?)の上をゆっくりと流れてボクの温室のところへ来て、ここに溜まるのではないかと思うのである。溜まった水は無制限に水位が上がるのではなく、一定レベルで南の田んぼに流れていくのではないかと。

だからちょっとだけ降った雨であっても、丘から流れてきた水が集まることで水溜りになるのだと思う。

 

この仮説が正しいとすれば、地下から上がってくる水は地表から5cm~10cm下ですくい取ってあげればいいということになる。大家さんが使っていた暗渠はそのまま活用し、それより上がってきた水を排水すべくもう一回路排水路を作ってあげることにした。

 

さて、やるべきことがハッキリしたのであるが、こういう落ちになるであろうことは予測できたことであった。問題はどうやってもう一回路の排水路を施工するかなのであった。どんな資材を使えば良いのかは前から知っていた。穴開きコルゲート管である。具体的には幅10cm、深さ30cmの溝を250m掘ってΦ50の管を埋めるのである。

250m・・・・・・手堀りできない距離ではないが、作業を開始してから終了するまでの間に雨が降ったら、レベルを管理して作業を行なう自信はなかった。理想的には下流から掘り始め、水が出ても下流に流してポンプで排水させるという理屈なのだが、手掘りでこれをやることはパワーと精度の両立から考えて無理だと判断できた。

 

どうしても機械で水が引いたときを見計らって、一気に溝堀をしなければならない。一般に溝を掘る土木機材はトレンチャーという。中古品を探してみると運賃込みで12万円以上(高い!)。農大の同窓生にあたってみるが、心当たりなし。ユンボにまで捜索範囲を広げるが、ミニユンボの安い中古はみつからない。

 

並行して代用品はないものかとあれこれ考えました。youtubeで海外の製品も含めて土木機材を片っ端から見て回って、溝堀マシーンのヒントは無いかと探しつづけました。そしておぼろげながら自作できるのではないかという「気配」のようなものが感じられたのです。

「これだ!」という確信は何も無かったのだけど、とにかくエンジンのパワーがあれば何とかなるという直感から、中古の管理機(耕運機)を送料込みで26,000円で購入。

 

この直前に試しに電動ウィンチで倍土機様のものを牽引して溝が掘れないかを実験して、日ごろ意識しない「仕事率=馬力」について痛烈に知ることになったのだ。ウィンチの牽引力は何百kgもあるのだけど、でもそれはDCモーターの停止寸前の時の推力なので、土木作業には使えないエネルギーだったのです。馬力にすれば0.3馬力とかそんなものしか無いのですね。

この経験と農大で操作した管理機の能力から、今回の目的を果たすには3馬力とか5馬力は必要であると確信し、26,000円の投資を決意したのであった。

 

ボクのものとなった大分からやってきた管理機には「千代」と名前を付け、1号から順に改良を加えていき、8号で実用に至って目出度く溝堀を終えたのであった。掘り終えた溝には穴あきコルゲート管を埋め、溝を埋め戻し踏み固め、ポンプをセットして用水路まで排水ホースをひいて完成。

雨が降ってももう大丈夫!

以前だったら水浸しになった40mmの雨でもマッタク問題なし。

 

多分これで水溜りの問題は解決したと思います。

こんなに苦労しなくたって他の土地を探せばいいのでは?とも思ったけど、ここの日当たりの良さと周囲の方々が皆養液栽培でやっていらっしゃることを思うと、どうしても離れられなかった。だって他所で養液栽培って言ったらキチガイ扱いされかねないのだから、ボクの栽培が始まるのをじっと見守ってくれているいまの集落はとても居心地がいいと考えるべきだと思ったのだ。

それに井戸水がふんだんにあるので、冬の夜温対策にも使えそうで、長期的に見るといいことずくめなのだ。

 

さて次は屋根だな。

でもこっちは目に見えることだから、地下水と比べたらチョロイ、はず♪