熱の伝わり方3種

日本の温室は多分全て何らかの防寒対策をしているはず。壁と屋根は薄くて透明な素材、塩化ビニール・ポリエチレン・ポリカーボネート・ガラスのいずれかが用いられていて、何も対策をしなければ夜間の温度は外気と同じになってしまうから。

 

そうなると温室内の温度を保つために色々と対策を取ることになる。

まずはいわゆる暖房器具を用いる方法。油で一番安いのはA重油というものらしく、温室の外に2000リットルくらいのタンクが置いてある。油を燃やして熱だけを温室内に放出すると、対流によって気温は上がるが外気とは薄い素材一枚で仕切られているだけなので、この部分で伝導対流により熱が奪われ空気の温度は下がり燃料代がとてもかかる。

そこで屋根の下に透明ビニールで一回り小さい密室を作っている。こうすることで空気の層を作り、対流による冷却を防いでいる。

 

しかしそれでもまだ燃料代が経営を圧迫するということで、密室を2重にする人もいるらしい。

また同様の発想で、プチプチを壁周りに展張できるようにした素材も売られている。ちなみに一般のプチプチは紫外線でダメになってしまうので使えない。

 

ここまでで、対流伝導が出てきた。

 

話はそれるが、毎日クリスタルパレスで日没まで仕事をしていると、建物の中にいるにも関わらず気温が急激に下がることを経験する。陽が高いときは暑いので薄着で仕事しているが、日が傾いて気温が下がり始めるとどんどん寒くなっていく。気温の低下に直ちに追従して厚着していかないと、すぐ凍えてくる。建物の中とは言うけど外にいるのとたいして変わらない。

そういう経験をしていたが、なんとなく認識するところに留まっていた。

 

そして先週大雪が降り、屋根に積もった雪は綺麗さっぱり脇に滑り落ちていた。これが上に書いた夕方急に寒くなる現象と頭の中で結びついた。

これは熱の伝わり方の3番目、放射による現象である。

熱は必ず温度が高い方から低い方に伝わる。地面は空気より比熱が大きいので夜間は常に地面の方が暖かい。そして空~宇宙空間は必ず地面より温度が低いので、夜は常に地面から宇宙に向けて放射が続いている。四季を問わず明け方が一番寒いのはこのためである。

 

とても長い前書きになってしまったが、この放射によってどのくらい熱が奪われているのかを実験してみた。

プラスチックの洗面器のなかに温度計を入れ、外気温センサーを外に出す。温度計は本体部分の気温と外気温センサーの最大値と最小値が各々メモリーできるようになっている。

2つの洗面器を各々アルミホイルと農業用地温保持素材(厚さ0.02mmの銀色ポリエチレン)で覆い最低温度をメモリーさせる。

今回洗面器は床に置いた。

 

5日間データを取り、洗面器内と外の温度差の平均が次の通り。

・アルミホイル:5.4℃

・農業シート:3℃

 

温度計の精度は甘いかもしれないが、しかし傾向ははっきり見えた。

クリスタルパレスもの容積で、5.4℃をA重油でまかなうのは大変なことですよ。どうやら世界中の農業資材メーカーは、この放射熱による損失に気づいていない模様。どうしよう??