ここ半年の総括

この温室でトマトを養液栽培にて生産するのが目標だが、ここ半年の試験栽培で色々なことがわかった。

 

1.害虫

この温室でトマトを栽培すると、以下の3種の昆虫が害を及ぼすことがわかった。

 

1)ハモグリバエ

幼虫が葉を食うことで樹勢に影響が出るので、適宜虫除け剤の散布が必要。病気の媒介には関わっていない。

 

2)アブラムシ

葉の裏に大量発生する。樹液を吸って胎生で単為生殖するから、広がるのが早い。排泄物が下の葉に黒い粉で溜まり、ここに葉カビ病などの菌が付いて発病する。さらに有羽タイプがモザイク病を持ち込んでくるので、先回りして定期的に虫除け剤を散布する。

 

3)オンシツコナジラミ

こいつの出現を一番恐れて、窓の網を思いっきり細かくしておいたけど、この夏の最後に現れた。天窓から入ってきたのか、ボクが外で身体に付けて持ち込んでしまったかのいずれかだろう。

こいつによる被害はアブラムシと概ね同じ。違うのはアブラムシは殆ど移動しないのに対して、こいつは羽ですき放題に飛び回るので、モザイク病の拡散が早いこと。

アブラムシ同様先回りして定期的に虫除け剤を散布する。

 

2.モザイク病

アブラムシとオンシツコナジラミによって媒介される、ウイルス性の生理障害である。罹患すると、その時期より上に成長する部分の葉が小さくなり、緑と黄のまだら模様になる。もしも罹患するより下に実が成っていれば、それは引き続き育てることも可能だが、発病した木は伝染源になるので、引き抜くことになる。

モザイク病抵抗品種はあるが、全てのレースに対応できる訳ではない。

 

3.菌による病気

菌による病気は、殺菌剤を用いることで防ぐことができる。文房具やパソコンのキーボードなどに、抗菌仕様といったものを見かけるが、概ねこれと同じ成分の薬剤である。

しかし定期的に散布しないと、黒かびや白カビに見えるものなど、数種類の菌に犯され、生産力が低下してしまう。

 

4.雑草

害虫は普段から雑草にも生息している。害虫が作物と接触する機会を減らすには、温室内外の雑草を常に刈っておくことが非常に重要である。

 

5.作型

せっかく養液栽培をやるんだから、高設ベンチで低段密植栽培を周年でやろうと思っていた。しかし種代、育苗、夏季の受粉障害、夏季悪労働環境、連休取得不可など、いくつか根本的な問題がはっきりした。

農業雑誌を読んでいたら、土耕だがUターン誘引で15段くらい採る栽培例が載っていた。夏の終わり頃から仕込んで、翌年7月中旬くらいで終わりにする。ボクのところは高設ベンチなので15段まではいかないかもしれないが、12段くらいはいけるのではないかと思う。あるいは後半なら斜め誘引も楽にできるので、15段以上も可能かもしれない。

 

6.種

種苗会社製の1粒10円以上する種と、買ったトマトから採取した種を一緒に育ててみたところ、想像以上に売り物は良い結果をもたらした。自宅用家庭菜園だったら代々種を採っておけばいいのだが、商品を生産しようとすると、1粒10円以上払わないとならない。もし低段密植でいくとすると、トマト1個の原価のうち3円前後を種代が占めることになり、とても負担が大きくなってしまう。

 

7.挿し木苗

トマトは挿し木で増やせると聞いていたので、脇芽を育苗してみたところ、成長し実を成らすことができた。購入した種から採った脇芽であれば、同じ遺伝子なので、いわば優等生のクローンである。

ここまでは良かったのだが、課題も見えてきた。簡単に言うと、生育が揃った脇芽を同じタイミングで多量に入手することができないのである。種から育苗するときは、完全に同じ条件で育てることが出来るが、定植すると木は一本一本少しずつ違った環境に置かれるので、脇芽の成長はバラバラになってしまう。不ぞろいなまま進めると、一緒に定植出来なくなり、作業が煩雑になりすぎる。

従って種代を圧縮するために挿し木することは諦めるしかないことがわかった。この件はUターン誘引するとなれば、マッタク関係なくなることである。

 

8.トマト栽培ではなく商品生産

よくテレビで、農作物を「手塩にかけて育てたわが子」というような表現を聞く。ながいこと「そんなおおげさな」と思っていたが、ようやくそのニュアンスがわかってきた。「親は無くとも子は育つ」と同じようにトマトは放っておいてもしぶとく生き延びるタイプの作物だが、手を掛ければ掛けるほど、素直に良く育ってよい実を成らせるのだ。

同時にスイカやキュウリも育てたが、生物としてはトマトはダントツに強かった。でも箱入り的にそーっとしておいて、環境は優しく快適にしてあげると、良い実が成るのでした。優しくするというその加減がわかってきた。

 

9.養液配合

うまくいっている。

微量要素を忘れるとどこか樹勢が落ちる感じもあり 、教科書どおりに反応している。

 

10.ベンチ強度

ベンチそのものは及第点に達したが、今後支柱の補強が必要になると思われる。

また水漏れの不安があるので、底のマルチシートは、一回り厚手のものを使いたい。

 

11.ポンプ

今使用しているポンプは、灯油式温水暖房器具から取り外したリサイクル品である。関東では単なる暖房器具であるが、北海道では24時間運転する重要な命綱である。従って耐久信頼性はとても高く、不安なく動作している。消費電力量が小さいのも好都合である。